2013年06月24日

【ストーリー/ジュール・リュエル】仔犬の決意

上機嫌な女が仮住まいの住宅の扉をばたんと開けて、
 留守番をしていた獣人の少年に話し掛ける。

 「ジュール聞いて〜! 母さんねぇ、お仕事決まったの!!
 ふふっ、人づての紹介なんだけどね、ウェイトレスさんなの。
 わかるかしら、食堂とかで給仕する人ね?」

 少年はその内気そうな顔を上げる。
 量の多い琥珀色の前髪の下で、つぶらな黒い瞳が瞬いた。

 「おし・・・ごと?」
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2013年06月23日

【ストーリー/リン】身隠しの滝壺



「お坊ちゃまとお嬢ちゃまが、い、いないっ・・・!?」

とある、砂漠のオアシス国家にそびえる、城とも言える瀟洒な貴族屋敷で。
国主の血縁に連なる双子を寝かせていたベッドが、
もぬけの殻になっていることに気付き、世話係の女・サリアは血相を変えた。

漆黒と言っていい程の濃い色の顔に描かれた、美しい唇を引き結んで屋敷中を探す。
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2013年06月20日

【ストーリー/リュエル・ジュール・威紺】『悪魔』と呼ばれた仔犬

ここではない世界の。とある国。
国主的存在はいるものの、小さな勢力がいくつも乱立し、内乱が後を絶たない。
そんな地方に彼女は生まれた。

生家は聖職者の家系で、わりと由緒正しかったらしい。
しかしその平穏も、物心つくかつかないかの頃に、過激派によって破壊され。
解放同盟…という名の革命軍に、国家レベルでの陰謀を示唆されて、
導かれるままに戦線に訓練兵として身を投じた。

戦うことについては才能がない訳では無かったらしい。
精神的にも比較的図太いらしく、血に塗れても狂ったりすることは、無かった。
ただ。
戦いの中で生きるに当たり、少女であることが著しく不利であること、
弱点であることを知り。
ある程度の年齢からは男装し、少年を装うことにしていた。

けれど。

「…そろそろ、無理がある、かなぁ」

胸元に巻いた幅の広い包帯では、柔肉を潰しきれなくなってきた。
声だっていつまでも高いと周囲に怪しまれる。
以下
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