2014年08月06日

13期M鯖OP案続き



「餞別です」

学生寮代わりに住んでいたアパートの家主でもある治癒術士が、
その特徴的な濃紺の長い髪を揺らし、鈴の音を鳴らしながら手渡した護符が、
2つ。

「これは…?」
「我が里に古くから伝わる戦守りです。
戦に最適な状態に体を調整する魔力が込められているため、
着けている間は肉体の年齢が一番活力のある年頃に調整され、
また病や怪我などの苦痛も和らげられます」
「活力のある年頃…?」
「女性の場合は体が生殖向けに成長する直前の十代半ば、
男性の場合は体力も体格も成長しきった二十歳ほどでしょうね。
個人差はあるでしょうが…」
「へぇ…」

ライルは掌の中の護符を眺めた。
小さな木の札に何か文字が書かれ、赤い紐を巻いた和紙で包んでいる。

「共に戦うご友人がいるようですから、二つ作ってみました」
「ノデの分も!? ありがとうございます!!」
「ちなみに若くて健康とはいえ、本来のリミットを振り切らせる訳ですから、
決して体にいい術ではありません。
それこそ永の生命を誇る一族でない限り、寿命を削る可能性もあります」
「そう…なんですか?」

こくりと頷き。

「元は、戦場で死ぬことを目的とした一族が、痛みや苦しみを忘れるために、
編み出した術法です。
私達の先祖の…、束縛の歴史でも…あります」
「……」



「若くて健康でも…、寿命を削る可能性が…か」

自分の手首にも巻いている、小さな護符を見つめ。

「でもね、ノデ。悪いけど僕は…、ワーズさんの意見に賛成だよ…。
勇者の誇りは、そりゃあ、あるんだろうさ。
…けど、誇りや意地で先立たれて、…恩も返せないまま…会えなくなるのは…」

真っ暗なままの部屋で。月灯りだけを頼りに姿見の前に立つ。

「姉さん…。僕は復讐なんか、どうでもいいから。
もっともっと姉さんの側にいたかった。姉さんを幸せにしてあげたかったよ…」

そして、ふらふらと、クローゼットの、扉を開ける。



昼の一件以来、ライルもノデも何だか忙しそうに立ち働いていて、
ルビィは完全に放置状態となっていた。
ジュールもなんやかんやで手伝いに走り回り。
怪我人どころか病人の看病さえしたことのないルビィだけが、
まったく蚊帳の外で完全放置されていた。

「そりゃぁ、無理矢理ねじ込んで同行したよぅなモンだけどォ、
女の子を退屈させるとかひどくね!?」

憤慨してずかずかと宿屋の廊下を歩く。

「この辺りだったかな、男子組が借りた部屋。
こうなったらベッドの1つでも、占領してぁげなきゃ気が済まなぃし!!」

記入中の宿帳を覗いた時の記憶を頼りに、ここかと思った部屋の扉に耳を付ける。
…と。

『…ライル。しっかりしなさい、男の子が泣かないの。
私は精一杯生きたわ。そして、貴方が元気に育ってくれたことが、その結果。
これってすごく幸せなことなのよ?
だから、イルレさんの気持ちも、尊重してあげて。
大丈夫よ。ワーズさんって方はきっと、彼女を守るため強くなるわ。
それにノデ君もいるでしょう? 
信じなさい、彼らがきっと全力で、あの女性を守るわ。…勿論、貴方もよ?』
『うん…そうだね。信じなきゃ、ノデの力を。ワーズさんの力もね…』

「…え? ライル? と、…女の人が、喋ってる??」

少々ハスキーな気はするが、息遣いやアクセントは女性のものだ。

『……おいで。いつもの、してあげるわ』
『えっ。…やだ、もう子供じゃないし、…恥ずかしいよ…』
『ふふっ。子供とか大人とか関係ないの。
貴方はいつまでも私の、小さなライルなんだから』

「Σぇええええっ!? は、恥ずかしぃことって、な、何っ!!?」

強い興味はノデに移ったとはいえ、未だルビィにとってはライルも、
憎からず思っている相手であることに変わりはなかった。
そんな少年が年上(だと思われる)女性に弄ばれようとしているとしたら、
少女としては見過ごす訳には行かない。

「ちょ、ちょちょちょーっと、ストップー!!
ちょ、調査旅行…で、不純異性交遊とか、ぁ、ぁ、ぁりぇなぃしー!」

ばたぁん、と派手に開いた扉に驚き、振り向く『女』。
その顔を見た瞬間、ルビィの口から放たれた、黄色い悲鳴---。



「な、何っ!? 何かあったの!!?」

いち早く飛んで来たのは、護衛として雇われているだけあって、
フットワークの早いノデ。
次にジュールがルビィと扉の間に入り込んで中を覗く。
最後にのそのそとやって来たのは、目付きの悪い黒衣の男・ワーズだった。

「何って…、ラ、ラ、…ライル、がっ…!」
「えー? …あー。…ああ…、アレかぁ…」
「はわぁー。またされてたんですかぁ…」
「何だ何だ? ん? …メイド…??」
「アレって…またって!? 前からああなの…!!?」

混乱しきったルビィの差した指の先には。
メイド服に身を包んだライルが、姿見に張り付き、扉の外に集まる面々を見ていた。

「また、リスティさんに、『会って』たの?」

ノデが呆れたように問えば。

「あはは…うん。…心が迷った時はこうしたら落ち着くんだ」

メイド姿のままライルが笑った。

「ど、ど、どういうことよぉ!?」
「そっかぁ、ルビィさんは見たことないんだ。女子寮ですもんね。
僕も初めて見た時は、ちょっと驚いちゃったし…」
「あぁ、そうだっけ。説明した方がいい…よねぇ。
ええとつまりね、ルビィ。なんだろう、こんなことを女の子に話すのは、
ちょっと躊躇っちゃうんだけど…」

ライルは幼いころに両親を亡くし、それからは姉の手1つで育てられて来た。
その姉も彼を養うために奉公に出ており、殆ど離れた状態で暮らしてはいたが、
それでもたまの帰省の時はとても優しかった。

母親譲りの銀髪に淡い緑の瞳。繊細にして人形じみた美貌が瓜二つの姉弟。
離れた時は鏡に映った自分を姉に見立て、日々の報告や思いを語っていた。
そして姉が亡くなり…、その形見であった制服…メイドの服を渡された時から、
彼はそれに袖を通すようになり…。

「でもね、もうそろそろ限界だなって、わかってはいるんだよ。
この服もさすがに背中が締まり辛くなって来たし。
15歳の今の僕が多分一番、あの日の…17歳の頃の姉さんに似ているけど、
この先どんどん変わっていくことも…、多分、姉さんと同じ17歳になった頃には、
全く似ない容姿になってるだろうことも分かってるんだ」

じっと鏡を見つめ。

「…旅行の間くらい、我慢すればいいのにね。
でも、こうして姉さんと会える、最後の時期だって思うとさ。
勿体無くて…、つい…」

困ったような微笑みはまさに、薄命に生を散らした、儚い少女メイドのようで。

「僕だって、もしかあさんを失ってしまったら。
そして僕がかあさんに似てたら、そうしちゃってるかも…だし…」
「うん。子供の時は死んだ人にいつまでも囚われてるって思って、
どうにかしてやめさせられないかって思ってたけど。
ライルが自分でわかってて、お別れの準備としてやってるなら、俺はいいと思う」
「んー? よくわからねぇけど、俺もいいと思うぞ。
新規臭ェ学生服より、そっちの方が見てて楽しいしな。
ま…女として見るには、ちっと胸元が淋しいんで、無理はあるがなぁ」

特に問題視していない男性陣の背後からひょこっとイルレも覗き込み、
「似合ってるならいいんじゃない?」とけらけらと笑った。

「え…本当ですか!? じゃあ、もうあと残り少ない間だと思いますが、
姉さんと一緒にいて…いいですか!!?
学校では基本的に、制服を着ていないといけなかったから…」
「って! ちょ、ちょっと待ってライル!
それって…普段からその格好で、生活するってこと…!?」
「え? 駄目?」

何を当然のことをとばかりに、きょとんとライルに首を傾げられ、
ルビィは視界が暗くなるのを自覚した。

「なんでみんな、すんなり認めちゃってる訳ェ〜〜〜!?(倒)」
posted by 裳本 都桃 at 00:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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